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気づけば、わりと一人でいることが多かった。
別に、孤独を愛するなんてそんな大人な理由ではない。
なんとなく、苦手。ただ、それだけ。
辺りを見れば、年長者が多かったからかもしれない。
一緒に遊ぶ年頃の猫は少なかったし、シラバブなんかは幼過ぎた。
時折、気まぐれにタガーは僕にちょっかいをかけてきた。
マンカスもリーダーだからとたまに様子を見に来てくれる。
タガーとよく一緒にいる大人の雌猫達は、タガーが僕にちょっかいを出した後、ついでに僕の頭を撫でていく。
他の猫達だって、そう。


“パンッ!”
両手を叩いて掌を月へと向ければ黄色い花びらが溢れた。
“パチンッ!”
右手を鳴らせば黄色い薔薇が1つ2つ…
脇に挟んでいたスティックを左手に持って振れば、それは消えて、僕の左手には月見草の花束。
観客なんていないけど、それが僕の日課。
月は何もしゃべらない。


「すごいすごい!!」
…あれ?今日の月はおしゃべりなんだ?
なんて思ったら、少し黄色の小さいのが僕に体当たりしてきた。
「痛っ…!!」
「すごいね!ミストはなんでもだせるんだね!!!」
興奮した様子で、ソレはしゃべった。

「…シラバブ?」
「うん、バブだよ」
「……………」
「……………」
「お前、こんな時間にどうしたの?」
迷子?と聞けば、
「ミストがいたから、バブはまいごじゃないよ」
と彼女は笑った。

この幼い子猫は皆に愛されている。
今頃、きっと街は大変な騒ぎになっているんだろうなと想像して笑った。
大人の猫達が、いつもの余裕なんてどこかへやって、慌てているんだろう。





















「?ミスト、なにかいいことあった?」
「別に。…何で?」
「だって、おかおがうれしそうよ?」
「そう?気のせいだよ。きっと」
そう答えて、僕は彼女の手を引いた。

今まで周りは大人ばかりで年下の相手をすることなんてなかったから、少しドキドキした。
どれ位力を入れて手を握ればいいのか分からない。
どれ位のペースで歩いていいのか分からない。
「だっこ」
と彼女がいえば、
「この位歩きなさい」と云うのか「良いよ」と云うのかどちらが正しいのか分からない。
分からないだらけのまま、笑う月の下を歩いて街へと行けば、見たことも無い位に慌てたマンカスがいて僕とシラバブは笑い合った。
「お前、僕が笑ってる意味分かってる?」
「わかんない」
でも、ミストがわらってるとバブもうれしい。と、子猫は答えた。

両手いっぱいの月見草の花束を抱えたシラバブが大人達に発見されたのはそのすぐ後。


Thank you.

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